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公正証書遺言と母、妻の思い
公正証書遺言の立会人になった。
これで3度目。
遺言書を作成したのは60代後半のYさん。
4名の子を持つ母であり、
数年前に夫が寝たきりになってしまった妻である。
Yさん夫妻は二人で頑張って共有財産を築いてきた。
ところが突然夫が病に倒れ、寝たきりに。
言葉も発せず、意志表示も不可能だ。
途方に暮れていたYさんだったが、
夫が病に倒れる前から、ずっと財産の分け方を口にしていたという。
「もしも、私も突然倒れたら、どのように財産を分けるかを伝えておきたい」
夫の意志が伝えられない分、
妻の意志は、母として残したい・・・
その思いで私の会社へお越しになった。
この土地と建物は長男に残したい・・・
この土地は長女と次女で二分の一ずつ・・・
お話を聞きながら、草案をまとめていく。
話の合間に、Yさん夫妻のこれまでの話を聞きながら。
優しい目元から、穏やかな時間と歴史が垣間見えた。
夫の持つ共有分は、現段階では遺言書を作成することが出来ないが、
それでも、Yさんは自分の二分の一持分の遺言書があることで
きっと4人の子供たちも、私の意志を分かってくれ、
夫の相続が発生しても、それに習ってくれると信じて託した。
「こうでもしないと、(寝たきりの)夫に後で叱られそう」
首をすくめて、お茶目に笑っていた。
母として、妻として、夫婦の財産をどう残していくか
毅然と考え実行したその姿。
その小さな背中とは正反対に、大きな愛だなと思った。
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